国境を越えるウイルスを国が止められるか-リージョン(地域)の優位性

 WHOがパンデミック(世界的感染流行)を宣言したように、新型コロナウイルスは急速に世界中に感染拡大している。感染防止のために、都市・地域・国の封鎖(ロックダウン)の措置が行われ、日常生活・経済活動が停止したところが多い。すでに、1929年の世界大恐慌を超える経済危機が訪れるとの分析もある。
 国境を越えるウイルスを国は止められないことは誰もが感づいている。グローバリゼーションを礼賛した復讐だとして、「国」に戻れと唱える学者もいる。他方、国を超えた仕組みが必要だと主張する者も多い(例えば、2020年3月29日付け朝日新聞「日曜に想う」グローバル時代、世界の忘れ物 編集委員・大野博人)。
 確かに、ウイルスを退治するためには、世界中の人類が叡智を出し合って連携して当たらなければならない。国や地域が対立している場合ではない。
 しかし、人々の生命と生活を守るためには、国ではなく地域に責任と権限を集中したほうがよい。ウイルスは人に感染するのであり、その人は地域で生活しており、全国を駆け回っているのではない。人が海外から入ってくる場合でも、入る空間は地域であって国ではない。
 感染状況はリージョン(地域)がもっとも適切に把握できる。だから感染拡大防止策や生活防衛策などはリージョン(地域)ごとに検討され実行されるのがもっとも有効である。現に、都市封鎖という形で感染防止策が実行されているのは、ニューヨーク州やカルフォルニア州というリージョン(地域)である。イタリヤ、フランス、インドという国家単位の非常事態宣言と外出禁止・経済活動禁止命令も出されているが、そこには全体主義的な権力集中という懸念がつきまとう。地域で起きる危機を、国家は管理することには適していない。ましてや「国際社会」もである。

スペインにおける国家と自治州

 イタリヤに次いで感染者が多いスペインを見てみよう。
 サンチェス・スペイン首相が国家非常事態宣言を行ったのは3月14日である。宣言に先立って、スペイン政府は自治州との国家・自治州共同宣言を提案したが、カタルーニャ州は共同宣言が感染防止ではなく中央集権化を狙ったものでしかないとして反対した。そして、独自にカタルーニャの地域封鎖を実行するとともに、港、空港、列車の往来禁止をその権限をもつ中央政府に要請したが、中央政府はこれを受け入れなかった。
 そうこうするうちに、中央政府のおひざ元であるマドリードでは感染と死者が増加し、スペイン全体の半数を占める事態が進行した。非常事態宣言から10日が経過したが、感染は拡大する一方であった。そして、先に国家・自治州共同宣言に署名した各自治州もカタルーニャに続いて完全封鎖を中央政府に求めることとなった。それでも、中央政府は全土封鎖に踏み切らず、現状でも感染防止が可能であると考え、中国企業から未公認のウイルス検査キット65万人分を入手する失態を演じた。
 各自治州からの抗議がさらに高まったため、サンチェス首相はついに3月30日から4月9日まで2週間の全国封鎖を行うことにした。
 ウイルス防止のために自治州が実行していた諸政策が各地で完全に実行されていれば、スペインの惨事は避けられたかもしれない。
 住民にもっとも近い政治単位たるリージョン(地域)がもっとも住民を守ることになる。新型コロナウイルス危機は、国民国家が歴史的退場局面にあることを浮かび上がらせた。

参考資料

https://www.elnacional.cat/en/politics/spanish-coronavirus-health-salvador-illa_485862_102.html?utm_source=Newsletter+ENGLISH&utm_campaign=4c8703dfb1-EMAIL_CAMPAIGN_2018_05_23_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_a9bc005625-4c8703dfb1-293793389
https://www.elnacional.cat/en/politics/coronavirus-sanchez-decrees-two-week-lockdown_486171_102.html?utm_source=Newsletter+ENGLISH&utm_campaign=060451bfde-EMAIL_CAMPAIGN_2018_05_23_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_a9bc005625-060451bfde-293793389