サンチェス首相再任に青信号－カタルーニャ自己決定を交換条件
スペインは７月23日の総選挙の結果、過半数を制する政党がなく（https://neoyamashita.kagoyacloud.com/2023/09/23/investiture/）、国王は規定によって第１党PP（国民党）党首フェイホーを首相候補者に指名して、下院での選出手続き行うように要請した。９月27日スペイン下院で信任投票が行われたが、172票を獲得したものの絶対過半数（176）に達しなかった。そこで29日、相対過半数をめざした第２回投票が行われたが、これも172対177で多数を獲得できなかった。10月３日、国王は第２党社労党党首サンチェを首相候補者に指名して、11月27日を期限に国会での信任投票を実施するよう要請した。
サンチェス首相再任にむけへカタルーニャ独立政党Juntsとの協定
サンチェス現政権を支持しているのは、社労党121、Sumar（旧ポデモス）31、ERC 7、Bildu6、PNV5, Galician nationalists BNG1の合計171票である。Juntsの７票があれば、絶対過半数（176）を獲得できる。
社労党は10月30日、組織局長をブリュッセルに派遣して、プッチダモンらJunts代表者と会談を行った。会談には、プッチダモンらの欧州議会議員当選を認めなかった社労党欧州議員も同席したが、サンチェス再選条件の議論は前向きに進んだ。
11月９日、社労党とJuntsがサンチェス再選で合意に達した。合意文書には、恩赦法には「Lawfare（政治課題の裁判化事案）」を含む、憲法に基づく自己決定住民投票を認める、カタルーニャ納税は100％還元する、合意の実行を監視する国際的メカニズムを創設する、が盛り込まれ、社労党組織局長とJunts事務局長が調印した。
Santos Cerdán社労党組織局長は、合意文書は紛争解決の歴史的機会となる、交渉と政治で解決が行われるとの見解を示した。両党会談は１１月にも始められるが、自己決定についてJuntsは「憲法９２条に基づく住民投票」提案は取下げ、社労党は「憲法は複数国民制を認めているから自己決定の発展をめざす」とその立場を明らかにしている。
合意実行を監視する国際的メカニズムは、監視仲介者を明示しないが、スペイン国外で会談が毎月行われるとされている。
社労党・Junts合意をうけて、サンチェス首相再選議会は１１月３週に開かれる。前回フェイホーに投票したカナリー諸島連合も信任するため、179票に達する見込みである。
右派諸勢力の反撃
社労党・Junts合意文書は公開されたため、右派諸勢力は猛反撃に出ている。
司法のトップ機関であるGeneral Council of the Judiciary（国家司法審議会）は右派政党推薦者が多数を占めているが、異例の臨時総会を開催して法案も示されていない恩赦法に反対する決議を上げた。
カタルーニャ政治犯への有罪判決に抗議した2019年秋の民主的ツナミ運動について、特別刑事法廷判事がテロ犯罪で捜査を開始した。プッチダモンとMarta Rovira ERC事務局長も関与の疑いがあると捜査対象者に加えられた。しかし、検察は４年間の捜査の結果、民主的ツナミ運動にはテロと断定する証拠はないと書面を提出した。
マドリッドでは連続した数千人の恩赦法反対デモが行われ、警察との衝突も起きている。市民自警団連盟APROGCは「最後の血の一滴までスペインの独立と主権及び憲法秩序を守る」と声明。司法省は声明を出した団体の捜査を開始した。こうしたなか、スペイン軍隊をまわってクーデターを呼びかける組織も出てきた。
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