会計年度任用職員問題解決は集団的に
11月3日、なくそう!官製ワーキングプア大阪集会Vol.9が 開催された。2020年4月から会計年度任用職員が導入されたが、コロナ危機が始まったこともあり、1年が過ぎた2021年度になってから本格的議論が開始されたといえる。しかし、筆者が上記集会に参加して感じたことは、問題解決において集団的労使関係が後景に退いているということであった。
労組法除外の会計年度任用職員
地方公務員法が改正され会計年度任用職員が導入され、臨時・非常勤の非正規地方公務員の大半が会計年度任用職員に移行させられた。また会計年度任用職員には地公法が全面適用(労組法非適用)される結果、不当労働行為制度からも排除された。
こうした法制度のもとでは、会計年度任用職員の雇用(任用)・労働条件について集団的に解決する、労働組合に団結する道筋が見えにくい。もちろん正規職員とて同じ地公法適用であるが、とりわけ非正規職員には問題が個別に起きやすい環境があるだけでなく、職場の労働組合に加入できない、少数職種だけで労働組合をつくることが困難という特殊性がある。そこで、現行法制度に定められている人事委員会(公平委員会)への措置要求、不服申し立てという、いわば個別的労使関係による解決に流れがちになる。
個別的解決に流れるのか
人事委員会等への措置要求等によって要求が実現することは多くない。また人事委員会等が使用者の機関であること、委員が労働基準監督官のような司法警察権を持っていないことから、救済機関に値しないところである。
ところが、上記集会では人事委員会等に解決を求める方向性が語られた。そこには問題を個別に解決する考え方が潜んでいるようである。上記集会第1分科会では川村雅則北海学園大学教授が報告を行ったが、筆者は彼の問題意識の多くに共感するが、いくつかの点、なかでも個別的解決手法について共感できなかった。
川村雅則教授は配布した上記レジュメで、問題意識として「非正規公務員+公共民間労働者+民間労働者=より大きな運動?」と、民間非正規制度を意識しながら問題提起として民間労働者には無期雇用転換制度や労契法等による雇用安定に関する制度があるが会計年度任用職員は逆行している、と提起する。そして、非正規労働者の官民比較を次のように示す。
川村雅則教授は、労契法による無期転換制度があるものの、その運用が制度どおりではないと問題点を指摘したうえで、それでも非正規公務員も無期転換制度をめざすべきだと訴える。
しかし、非正規公務員がめざすのは無期雇用(任用)の個別獲得ではないだろう。この挿絵からは、「蜘蛛の糸」(芥川龍之介)がイメージされる。労働運動がめざすのは地獄から天国に上る階段を見つけることではなく、民間と公務員の間にある「壁」、そして地獄と天国を分ける「天井=床」を取り除くことである。
混合組合をつくれ、混合組合になれ
民間と公務員の間にある「壁」を取り除くことは、混合組合をつくることでもある。川村雅則教授は「非正規公務員+公共民間労働者+民間労働者=より大きな運動?」と訴える。この?の意味は分からないが、ここには正規公務員も入るべきである。つまり、職場のすべての労働者が団結する・団結できる労働組合=混合組合がめざすべき方向なのである。
会計年度任用職員の問題は、地公法改正によって奪われた不当労働行為救済制度の再適用で解決することである。上記集会には、大阪教育合同労働組合から資料が投げ入れられた。その資料によれば、会計年度任用職員の雇用(任用)に関する団交拒否救済申立てを労働委員会が却下するようであれば、ILOへの申立も行うだろうと示唆している。