スペイン vs ヨーロッパ・カタルーニャ
10月27日、ベルギー憲法裁判所はカタルーニャ出身ラッパーでベルギー亡命中のバルトニックのスペイン送還に関する判断を地方裁判所に差し戻した。バルトニックはスペイン王室批判の歌詞(「カルロス1世は泥棒だった」)が王室侮辱及びテロ扇動にあたるとして、スペイン治安裁判所・最高裁から3年半の禁固刑を言い渡されたが、2018年6月にベルギーに亡命した。スペイン裁判所は彼に欧州逮捕状を出して、EU関係国に逮捕・送還を求めていた。
この日ベルギー憲法裁判所は、王室侮辱罪を定めたベルギー1847年法が表現の自由を蹂躙するものであり、憲法違反であるとの判断を行い、バルトニックの逮捕・送還ついて地方裁判所が判決を下すように求めた。地方裁判所は11月23日に判決を行うこととなった。
バルトニックへの禁固刑はスペイン裁判所が行ったのであるが、ベルギー憲法裁判所が異論を唱えることになったのである。さらに王室侮辱罪が憲法違反と判断したことからベルギー国内にも波紋を呼び起こしている。
国内法が欧州法に優先するのか?
EU及びEC(欧州委員会)は、先頃ポーランド憲法裁判所が国内法は欧州法に優先するとの判断を行ったことを批判し、制裁を唱えている。しかし、スペインがカタルーニャ政治犯及び州閣僚弾圧を行っていることについては、無言を貫いていることから、欧州議会やEU諸国からダブルスタンダードであるとの批判が起きている。また反政府ジャーナリストの逮捕について、ロシア政府はその正当性を訴えるために、カタルーニャ政治犯に言及しないEUを引き合いに出している。
トニー・コミン(カタルーニャ出身亡命欧州議員)は10月21日の欧州議会で、EUの二重基準を批判し、スペインは権力分立をしていない原因を次のように述べた。ナチズムはドイツで、ファシズムはイタリアで、サラザリズムはポルトガルで、スターリニズムは東方諸国で敗北したが、フランコイズムはスペインで敗北していない。
止まらないスペインによるカタルーニャ弾圧
10月27日、カタルーニャ議会元副議長が逮捕された。コスタ元副議長は2019年11月にトレント議長(当時)とともに、憲法裁判所が禁ずるカタルーニャ独立案件、スペイン王室との関係遮断について議事を認めたことに関して、高等裁判所の召喚を受けていたが、これを拒否したため、独立宣言4周年目のこの日に逮捕された。
スペイン会計監査院は、カタルーニャ州政府が独立住民投票を行うことについて、海外事務所への費用を支出したことが、違法な公金支出にあたるとして、プッチダモンら州政府閣僚など34人に計540万ユーロの費用弁償を求めた。会計監査院の委員は政党から選出されるだけでなく、その決定については裁判で争うことができない仕組みになっている。さらに、費用弁償についてカタルーニャ州政府あるいは民間基金が肩代わりすることも禁止している。このことが権力未分立といわれる所以である。
参考資料