プッチダモン イタリアで逮捕-裁判所が翌日釈放
9月23日、プッチダモン亡命首相は、イタリアのサルディニア州アルゲーロで開催されるアディフォーク国際集会に参加するために当地を訪れた。しかし待ち構えていたローマから派遣されたイタリア国境警備隊によって、逮捕された。
スペイン最高裁が発行した欧州逮捕状にもとづく逮捕であるが、すでに欧州逮捕状はドイツ、ベルギー等の裁判所で無効であるとの判決が出されている。また、今年7月欧州司法裁判所は欧州議会が3月に決定したプッチダモンの欧州議員刑事免責剥奪を追認したが、その理由として彼は逮捕されることにならないというものであった。
今回の逮捕には、スペイン警察と裁判所が関与していることは明白であり、スペイン最高裁は、ベルギー裁判所が刑事免責を認めたのはベルギーに限ってのことであり、イタリアでは欧州逮捕状は有効であるとコメントした。
検察も逮捕に反対-裁判所が釈放決定
しかし翌24日、サルディニア控訴裁判所はプッチダモンを無条件で釈放し、スペイン送還について判断するために10月4日に再度召喚することとした。検察当局がプッチダモンには欧州議員としての刑事免責があるから、逮捕は権利侵害だと論告した。
一晩留置所で勾留されたプッチダモンは、予定通りアディフォーク国際集会に参加した。27日にはベルギーの亡命先に帰宅した。プッチダモン逮捕には海外メディアを含め、多くの報道が行われ、カタルーニャ独立問題が取り上げられることとなった。また、ヨーロッパ各地では、釈放をもとめるデモが行われた。
スペイン・カタルーニャ政府間協議に暗雲
カタルーニャ問題を解決するとして、スペイン政府とカタルーニャ政府の協議が今年9月に再開された。トーラ・カタルーニャ前首相が政治犯釈放の横断幕を下ろさなかったことから、議員資格を剥奪されたことで協議は中断していたが、今年2月の選挙で新政権が発足したことから、再開が模索されていた。しかし、カタルーニャ連立政府を構成するJunts(プッチダモン指導)は、9月15日に開かれた政府間協議への参加メンバーリストを提出したが、閣僚以外を含んでいたとして協議から排除された。
今回のプッチダモン逮捕にはスペイン政府が関与しているとすれば、政府間協議の続行は困難となる。カタルーニャ政府首相を出しているERCは、スペイン・サンチェス政府に協力的であるが、国会において予算・法案にどう対応するか問われることとなる。
ポデモスの役割?
こうした懸念もあってか、スペイン前副首相であるパブロ・イグレシアス(ポデモス幹部、政界引退)は、9月27日出演したラジオ番組で、「スペイン閣僚(ポデモス出身内相)に確認したところ、スペイン政府もイタリア政府もプッチダモンの逮捕は知らされていなかった」と発言した。影の政府と司法当局が仕組んだ逮捕であったと推測している。またポデモス報道者は、「イタリア裁判所がプッチダモンを送還しなかったのは、マフィアをスペイン政府がイタリアに送還しないからだ」と論評した。つまり、プッチダモン逮捕には現政権は関与していない、だから政府間協議は続行できる、と言いたいのである。
たしかに、スペイン・カタルーニャ政府間協議がなくなることは、PP・VOXなど右派政党の願いでもある。
参考資料