カタルーニャへの「国家権限」委譲でスペイン大荒れ
2025年3月4日、スペイン与党である社労党とカタルーニャ独立政党Juntsは移民管轄権限移譲基本法制定で合意して、法案を下院に提出した。この法案は、カタルーニャへの入域管理(immigration)についてはカタルーニャ自治政府が行うもので、従前のスペイン国家の権限を委譲するものである。
EU以外からの入域管理は、カタルーニャ警察が管理し、市民権取得には第2外国語(第1外国語はスペイン語)としてカタラン語能力が必要となる。その他の取扱いはスペイン国家が行っていたものと同じである。

背景事情
スペイン社労党とJuntsの合意は、2023年7月総選挙でサンチェス・社労党が第1党になったものの、過半数に達しなかったため(https://neoyamashita.kagoyacloud.com/2023/09/23/investiture/)、同年11月のブリュッセル合意を得てJuntsの議席数を加えることによって政権樹立を行った背景がある(https://neoyamashita.kagoyacloud.com/2023/11/18/sanchezinvestiture/)。すなわち、ブリュッセル合意には恩赦法成立とカタルーニャ独立運動救済が盛り込まれたからである。
しかし、スペイン司法当局からの妨害等によって、恩赦法のJunts党首プッチダモンへの適用は除外されたため、Juntsは国会でサンチェス政権の不信任の動きを始めた。そうしたなか、第3者の仲介で、不信任取り下げとカタルーニャへの権限委譲が合意されることになったのである。ブリュッセル合意から1年4ヶ月が経っている。
右派、左派が猛反対
この社労党=Junts合意には、国民党やVoxの右派だけでなく、社会党、ポデモス、Summar の一部も左派も猛反対している。右派は、スペイン・ナショナリズムに基づき、国家権限を地方に移譲することに反対する。左派は、権限委譲は外国人排外主義をとる右翼の仕業だと反対する。
これに対して、Juntsはカタルーニャへの移民する者はカタルーニャに統合されて、カタルーニャを形成するのであると、カタルーニャ独立の精神から右派・左派の批判に反論している。そして政策的には、社会党・ポデモス連合が存続させてきた「移民収容所」の廃止を打ち出している。
入管という国家権限のカタルーニャ委譲が実現するか、各潮流の動きを含めて注目される。
参考資料