カタルーニャ独立運動に対する欧州とスペインの司法判断
欧州司法裁判所が欧州逮捕状で裁定
1月31日、欧州司法裁判所(ECJ)は、EU諸国は欧州逮捕状を執行するものであるが、それが司法の体制的欠陥により、客観的に特定されるグループに属する容疑者の基本的権利を侵害する場合は、拒否できる(例えば、裁判を受ける権利が保障されない場合など)、「スペイン最高裁が最初で最後の決定を下すようでは体制的欠陥である」との決定を行った。「客観的に特定されるグループ」とは、従前の人種、宗教、国籍などと違った新しい概念である。また、欧州逮捕状は同一人物に何回でも発行できる、とも判示した。
この欧州司法裁判所の決定は、ベルギー裁判所が2021年1月にカタルーニャ亡命閣僚のスペイン引き渡しを拒否したことについて、スペイン最高裁判事が求めた質問に答えたものであった。
解釈の幅
この決定をうけて、プッチダモンら亡命閣僚は、スペイン当局は公正裁判を実施しないのだから、体制的欠陥をもち、欧州逮捕状は無効であるとの見解を表明した。しかし、スペイン最高裁は、スペイン司法には体制的欠陥がないのだから、プッチダモンらへの欧州逮捕状は執行される、と解釈した。
亡命閣僚への欧州逮捕状は再度発行されるだろうから、EU加盟国の対応が注目される。
改正刑法による減刑と重刑
2023年1月に施行された改正刑法をうけて、最高裁はカタルーニャ政治犯および裁判待ち被告に対する刑罰の検討を行った。
2月13日、カタルーニャ政治犯9人は禁固刑については「恩赦」による減刑が実施されたため、公民権停止について改正刑法適用についての決定が行われた。4人は公金不正使用、不服従で減刑にならず、2030-2031年まで選挙に立候補ができないとした。のこり5人のうち、市民団体幹部2人は公秩序破壊だけ、政治家3人は不服従だけなので減刑となり公民権が復活した。
最高裁は、住民投票を実施したことは公金不正使用にあたるとしたため、同容疑で欧州逮捕状が出されている亡命閣僚には加重禁固刑となる可能性がある。
参考資料