国連がスペイン国による盗聴を批判
2023年1月3日、国連特別報告者3人がペガサスによるカタルーニャ独立運動家への盗聴スパイ行為は基本的人権を侵害するものと認定した。被害者の人権回復のための措置、また捜査・訴追・制裁などによって二度と起きないための措置を講じることを求めた。
ペガサス・ソフトウェアはイスラエル民間企業が開発し、各国政府機関にしか販売されていない。ハンガリー、ポーランドなどの政府は、外国からの攻撃を防ぐため、あるいはテロ対策のために購入したとしているが、政敵や市民運動家の携帯スマホなどに侵入して、メール書き換えや発信を行っている。
スペイン政府はサンチェス首相も侵入されたと弁明しているが、実態の解明には消極的である。カタルーニャ州知事・議員および独立運動家たち65人が盗聴スパイされたとカナダ・トロント大学のCitizen Labが発表したにもかかわらず、調査も回答も行っていないため、国連が非難したものである。
カタルーニャ独立運動の分岐
カタルーニャ独立運動の戦略を巡ってJuntsと左派ERCの間に亀裂が入り、2022年10月にJuntsが連立政権から離脱した。戦略上の大きな違いは、スペイン政府との合意による独立住民投票実施を掲げるERCに対して、Juntsは住民投票は2017年に実施されており独立のプロセスを進めるとするものである。
スペイン政府はカタルーニャ政府との対話を否定していないが、扇動罪廃止・公共秩序悪化罪新設という刑法改正にERCが賛成したことは2017年住民投票を犯罪と認めたものであるとして、独立問題は解決したと表明し、対話は独立以外の項目に限られるとした。また、憲法では独立は認められていないとの立場も強調した。これに対して、ERCは対話を継続するとするものの、打開案は見つけられていない。
スペイン政府が、ERCの賛同を得て刑法を改正したことに対して、政権与党社労党内部から「犯罪者との妥協による改正」であると批判が続出した。Castilla-la Mancha、Aragón、Castilla y León、Madridの党幹部などである。これに対して、大統領府長官は、対話と交渉によってカタルーニャ独立問題は解決した、このことは2023年の統一地方選や総選挙にとって有利な材料になると反論している。
バスク議会が王室廃止国民投票に動く
バスク自治州議会は、ポデモス会派から提案された王室廃止国民投票案について2月に投票する運びとなった。2020年にもポデモス会派は同様の提案を行ったが75議席中6議席しかなく、21議席を持つEH Bilduも提案に賛成したが、31議席を有するバスク国民党BNPがバスクには王室がない、王室はスペインに存在しているにすぎないとして賛同しなかった。今回の提案では、スペイン王は1966年にフランコ独裁政権よって任命されたものであり、1978年憲法で「議会君主制」と定義されたが、国民投票は憲法一括賛否を問うものだったために、君主制か民主制かの選択ができなかったのだから、憲法改正国民投票をスペイン議会に要請するという内容となっている。そこで、バスク国民党BNPも賛成することになったのである。
2020年にカタルーニャ議会は王室廃止議案を採択したが、憲法裁判所が採択を無効とし、これに従わなかったとして議会議長を訴追した。今回のバスク議案は条例改正などの拘束力がないため、裁判所の介入はないとされる。
参考資料