スペイン最高裁がトーラ首相の公民権停止決定
9月28日、スペイン最高裁はトーラ首相に不服従罪で18か月の公民権停止、3万ユーロの罰金を科した。
2019年4月に行われた総選挙において、中央選管が選挙期間中は「政治犯」「亡命」という文言を使用しない、公の建物の政治的中立を要請し、カタルーニャ政府には政治犯救援のシンボルである横断幕や黄色リボンの政府建物からの撤去を命令した。
しかし、トーラ首相はこの命令に従わなかったため、中央選管は不服従罪で訴追した。2019年11月カタルーニャ高等裁判所は不服従罪を認めて、トーラ首相の公民権停止判決を行った。そして、最高裁が上訴棄却の判決を行った。トーラ首相は、議会不可侵・表現の自由・政治的代表権が侵害され、中央選管には横断幕撤去命令、不服従罪を適用する権限がないと主張するとともに、横断幕は政治行為であり行政行為ではない、欧州基準では、無罪か罰金刑だとも主張した。しかし最高裁は、中央選管の横断幕撤去命令に従わなかったことが不服従の罪となる。個人の表現の自由は侵害されていない、と判断した。
9月29日トーラ首相は、最高裁決定が憲法違反だとして憲法裁判所に提訴した。10月5日に審問が開始される。憲法裁判所の判断は、欧州司法裁判所に提訴するための前提条件である。
スペイン国家機関によるカタルーニャ首相追放
2017年10月1日独立住民投票、10月27日州議会による独立宣言に対して、スペイン国家は憲法155条を発動して、自治権停止・役職解任、州議会解散、直接統治を開始した。その結果、9人の州政府閣僚は反逆罪・扇動罪・公金不正使用で逮捕され9年~11年の実刑判決を言い渡された。他方、プッチダモン首相(当時)ら3名は欧州に亡命することとなった。
またしてもカタルーニャ首相は国家機関によって追放されることとなった。トーラ首相は判決後直ちにカタルーニャ政府を去らなければならなかった。当面、副首相が代行を務めるが、近いうちに州議会選挙が行われ、新しい州政府を選ぶこととなる。しかし、トーラ首相はあらゆる選挙に立候補できない「公民権停止」となったため、州議会への復帰は不可能となった。
海外・国際機関の反応
海外メディアはこぞって最高裁判決によってカタルーニャ紛争が再燃すると報じた。アムネスティ・インターナショナルや国連恣意的拘禁作業部会は政治犯の釈放を求めている。しかし、スペイン中央社労党・ポデモス左派連立政権は三権分立を理由に政治的解決に踏み出そうとはしていない。
参考資料