ドキュメンタリー『Surveilled』が暴くスペイン
-カタルーニャの友人からのレポート-
スペインはカタルーニャの平和的な独立運動を違法に監視している
2024年11月20日、ジャーナリスト、ローナン・ファロー(ミア・ファローとウディ・アレンの息子、ハーヴェイ・ワインスタイン事件の解明でピューリッツァー賞を受賞し『タイム』誌による2018年最も影響力のある100人の一人)が制作したドキュメンタリー『Surveilled』(https://www.youtube.com/watch?v=f8rh8reDqj8)がHBO Maxで初公開された。このドキュメンタリーは世界中で反響を呼んでいるが、不思議なことにスペインでは、スペイン国家が主人公であるにもかかわらず、ほとんどのメディアからまったく無視されている。
このドキュメンタリーの中で、ローナン・ファローはカタランゲート事件を糸口に、ペガサスなどのスパイウェア業界の闇の世界を掘り下げている。カタランゲート・スキャンダルは、2022年にファロー自身が『ニューヨーカー』誌のレポート「民主主義国家はいかに市民をスパイするか」ですでに明らかにしていた。それは、Canadian Citizen Lab(トロント大)によるこれまで最悪な携帯電話スパイの発見を報じている。すなわち、少なくとも65人(カタルーニャ独立運動の政治家、活動家、弁護士)が違法にスパイされ、それは平和的独立運動を弾圧するスペイン国家によるものだといわれているが、スパイをする唯一の「罪状」はスペイン・アイデンティティの根幹をなす超国家主義にとって受け入れがたい政治的提案を打ち出したことなのである。
イスラエル企業NSOグループが運営する『ペガサス』のようなスパイウェアは、テロリストや組織マフィア、危険な犯罪者からの暗殺を防ぐために、国家にのみ販売されている。このような場合、より大きな悪を防ぐためにプライバシーや親密さ(intimacy)の権利を侵害することは適切であるという暗黙の了解がある。
しかし、この映画の論点は、この技術はこのような例外的なケース以外にも使えるというものだ。サウジアラビア政権がペガサスを使ってジャーナリストのジャマル・カショギを追跡し暗殺したように、すでにあらゆる権利を侵害している独裁政権は、前述のケース以外でもこの技術を使うことができる。そしてこの映画は、西側の民主主義国家もまた、こうしたほとんど目に見えないテクノロジーを、政治的ライバルに対する間違った目的のために使いたくなることがあると論じている。このような例として、スペイン国家が国民としての資格に疑問を投げかける政治運動を押しつぶすためにいかにして一線を越えるかを描いている。たとえカタルーニャの独立運動が市民デモや交渉を通じて民主的に行動し、住民投票の結果を示しただけとしても。
スペインは2010年以降この市民運動を圧殺するためにあらゆる合法・非合法な行為を推し進めてきた。すなわち、住民投票を暴力的に阻止するために1万人の警察官を送り込み、賄賂を使って運動に不利な証拠を捏造する自警団を作り、市民組織にスパイを潜入させ、司法制度を利用して弾圧し、携帯電話を通じて幹部活動家たちを違法に監視してきた。
このドキュメンタリーは世界中、特にアメリカで反響を呼んでいるにもかかわらず、スペインのマスコミは意図的に無視している。スペインのマスコミは、このような非合法な行為をすべて隠そうとするか、何か明るみに出ても、民主主義国家がとるべき 「普通の」行動としてごまかそうとしている。マルガリータ・ロブレス国防相が国会で述べたように、「もし彼らが国家の存続を脅かす運動であるならば、彼らをスパイし、あらゆる手段を駆使して戦わないわけにはいかないだろう。これがスペインの歴史において行われてきたことである。スペインの統一のためなら何でもする」。しかし今、民主的とされる枠組みの中で、それはまだ効力をもち、スペインの超国家主義は、民主的システムを独裁的システムから区別する担保を「選択的に」留保することを、カタルーニャの独立賛成運動に適用することに何のためらいも持っていない。
ジョルディ・オリオラ・フォルチ バルセロナ( カタルーニャ)在住