バルセロナ市長選で社会党・左翼・右翼が野合
スペインでは5月28日に地方自治体選挙が行われた。政権政党である社会労働党が後退し、PP国民党(日本の自民党にあたる)が躍進した。すると、サンチェス首相は7月23日に総選挙を行うことを発表した。政権パートナーであるポデモスも内部の亀裂から議席数を減らした。7月総選挙の結果によっては、PP・極右Vox連立あるいはPP・社労党連立政権が誕生すると言われている。
独立派には市長を渡さない
今回の自治体選挙で注目されたのが、カタルーニャ首都バルセロナである。選挙は名簿式比例代表制をとっており、5月28日の投開票で各党が獲得した議席は下図のとおりである。
Junts(ともにカタルーニャ)とERC(カタルーニャ共和党左派)が独立派政党
前回(2019年)選挙では、ERCが第1党になったが、ポデモスが社会党および右派の支持を取り付けて市長の座を得た。また、社会党は副市長の座を得た。
しかし、今回の選挙の前に社会党はポデモスとの連携をやめ、それぞれの政策を批判して、選挙戦に突入した。そして、選挙結果をうけて、ポデモス、社会党ともに連立をしないことを公言した。
市長は議会第1党から選出されるのが民主主義の基本であるが、Junts系、社会党、PP、VOXが市長に立候補した。市長を選出する議会は6月17日に開かれた。すると、ポデモスは突然、コルボニ(Collboni)社会党候補に投票すると発表した。そして第1回投票で過半数を獲得するために、PPも社会党に投票するとなった。
これは、独立派市長の誕生を阻止する一点で社会党、左翼政党、右翼政党が野合したことを意味する。たしかにPPは選挙戦において独立派を市長にさせない、ポデモスを市政権から排除することを訴えていたが、社会党候補に投票することで実現したのである。フェイホー(Feijóo )PP党首は「スペインが勝利した」とバルセロナ社会党市長誕生を称賛した。
第1党となったJuntsは「またしてもスキャンダルが起きた。2015年には虚偽情報によって市長を下ろされ、2019年には第1党ERCがポデモス・社労党・右派市民党連合によって阻止され、今回も同様の事が繰り返された。第1党が市長になり政権をつくることが市民の願いのはずだ」と非難した。ERCも選挙ではお互いを批判して共通政策がないにもかかわらず、独立運動を阻止するための野合であると非難した。
なお、独立を支持する市民運動は、ERCカタルーニャ政権がスペインとの対話路線を変更しないことに抗議して選挙を棄権したと伝えられる。棄権票は30万票ともいわれる。
参考資料